虹色の雪

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「では、もう一度アクセスしてみてください」  浩太の言うとおりに、正義と龍川を含む6名の社会人がギルドを結成した。  ギルドのアイコンはこれまでずっと暗転したままであったが、どうやら安全地帯の中ではその機能を使用することができるようだった。  ギルドマスターは当然、岩城正義。  これについて社会人チームからは何の不満もでなかった。  一方、社会人チームが最初にアクセスすることについて、学生たちの内心では『よくわからないけどずるい』という程度の不満はあったようだったが、兼光が納得しているようであったから、誰もそれを口にしなかった。  ちなみにギルド名は『サービス斬業』。  なるほど社会人らしい皮肉と哀愁がこもっている。  ギルド名は後からでも変更できるそうなので、取りあえずと、龍川が適当に決めてしまった。  正義が画面上のYESの文字に触れる。 『ケテルへのアクセスを確認しました。「サービス斬業」による開拓を始めます』  正義の作ったギルドに属している者のIF画面にだけ、そのテロップが出現していた。  その直後のことだ。  にわかに台地の中心にあたる箇所の地面が盛り上がり始めた。  そして破れた地表から吹き出した眩いばかりの閃光は、レーザー光線のように収束しながら天へと昇っていく。  強烈な光と地を揺らすほどの衝撃に驚いて、皆が顔を背けていた。  柱状の光の束は空中で枝分かれを繰り返し、何かの形を成そうとし始める。  やがて、全ての光の束が質量を持った何かしらの姿に変化すると、誰しもが感嘆の声を漏した。 「すごく……、大きい……」 「なんだこれ……」 「綺麗……」 「デカァァァイ セツメイフヨウ!」  最後のはライアンだ。説明はする。  天高くそびえるその巨塔の名は「セフィロト」。  セフィロトとは、旧約聖書の中で楽園の中央に植えられていたとされる「生命の樹」を意味する言葉だ。  正義がアクセスした「ケテル」とは「王冠」を意味し、セフィロトの天頂を指す言葉で、思考や創造を司っている。  人で例えるなら頭といったところだろう。
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