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彼らの眼前にそびえるセフィロトはIFに似た黒色の金属のような材質でできており、外輪は六角形。
外輪を成す柱の頂点や中点、またはそれらを結ぶ対角線を成す柱には10の光球がちりばめられており、六角形の中心よりやや上方にある空洞を埋めるかのように、巨大な水晶が一際神々しい光を放ちながら回転していた。
ただ茫然とそれを見上げていた彼らであったが、自身のIFのスイッチが点灯していることに気付いて幾人かは画面を立ち上げ始めた。
『この村をホームに設定しますか?』。立ち上げたIFの画面にはそう書かれていた。
皆、戸惑いながらお互いに顔を見合わせていたが、浩太は何かを察して、真っ先にそれを承諾した。
そしてしばらくIFを弄った後で、彼は全てを理解したかのように頷き、皆に説明を始めたのだった。
浩太は手始めに、彼らの目の前に家を出現させて見せた。
一言で家とは言ったものの、浩太のIFから溢れた光が形作ったのは、丸太を組んで作られた簡素なバンガローであった。
簡素ではあるが、都会のワンルームのアパートよりはいくらか広く、それなりに洗練されたデザインをしていた。
浩太と共にその中に入った学生の一人が流し台の蛇口を戯れに捻ると、あろうことかそこから水が惜しみなく溢れた。
さらには、小奇麗な洋式トイレが備え付けられており、そのタンクにも水がたっぷりと入っていた。
レバーを捻れば、当然のように水が流れる。
学生たちは驚いて、外にでてからバンガローの床下を覗き込むが、やはり水道管らしきものは見当たらない。
それもそのはず、さきほど出現したばかりのバンガローに水道管が引かれているわけがない。
理由は分からない。
だが、少なくとも水に関しては不自由することがなさそうだと分かっただけでも、彼らにとっては大きな収穫だった。
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