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獣の一匹が、牙をむき出しながらじわじわと距離を詰めはじめる。
その口元からは長い髪の毛が無残にも垂れ下がっていた。
「あ……あああっ! やめ、やめて、来ないでぇ!」
集団の後方、獣たちの間近に座っていた女生徒の一人が、たまらず振り絞るようにして悲鳴を上げると、獣はその金切声に呼応するかのように彼女に飛びかかった。
人と同じか、それ以上はあろうかという巨躯の獣は軽々と女生徒を押し倒すと、唸り声を上げながらその腕に喰い付いた。
「い、嫌ぁ!!! ……た、助けて…助けて!」
腕に牙を喰いこませながら、引き千切らんばかりの勢いで力任せに女生徒を引きずる獣。
他の数頭も孤立した彼女の元へと舌なめずりをしながらゆっくりと近づき始める。
誰もがこの後再び起こるであろう惨劇に備えて目を瞑っていた。
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