風系能力者

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一年前のあの日突然俺に不思議な能力が目覚めた。 それは大気中の空気を操る風系能力だった。 それ以来俺の生活は劇的に変わった。 そう…… 移動手段として、空を飛べるようになり、部屋にあるものも手を使わずに大気中の空気を上手に操ることで取れるようになったし、逆にごみ箱にゴミを投げれば100発100中で入るようにもなった。夏場は扇風機いらず。床に落ちてるゴミも風を使って上手に救い上げれば掃除機もいらない。 徒競走のときは自分にだけ強風を吹かせて、瞬間的に速くなることができた。おかげで体育祭のときはヒーローだった。 ……なんだか書いてて悲しくなってきたな。風系能力しょぼいことにしか使ってねぇ……。 劇的に変わったとか言ってたけど俺の日常生活はそんなに変わったわけじゃない。 風系能力があったって、テストの点数が良くなるわけでもなく、 風系能力があったって、人間関係を円満に進めてくれるわけでもなく、 風系能力があったって、女の子にモテるわけでもない。 日常生活にちょっとした変化が起こるだけです。 あったらあったで便利だけど、なくても充分生きていけます。 それが風系能力。 ……正直俺もこの能力が目覚めたときはいろいろと妄想しましたよ。 突然謎の組織に襲われたと思ったら、不思議な美少女に助けられ、『あなたの力の正体は……』とか語られ、やがてその少女と多くの仲間たちとともに謎の組織と戦う。 そんな妄想をしてましたとも。 しかし、現実は美少女が空から降ってくることもないし、謎の組織が襲って来ることもない。せいぜい隣の家の犬が吠えて来るくらい。 これだけの力を持たされて放置プレイって、なにを考えてるんだよ神様!? なにもないならないって言ってよ!! なにもないってわかってれば、来たるべき戦いの時(笑)に備えて、轟く飛壟の咆哮(ドラグーンブラスト)とか、切り裂く真空の刃(エアロスラッシュ)とか、深夜の公園で叫びながら練習しなかったのに。今じゃ黒歴史だよ。しかも地味に威力強くてちょっとした爆発跡地になってたし。現場調査に警察来てて冷や汗かいたのは今でも悪い思い出です!!
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