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自己紹介が終わると、担任は「みんな、仲良くな!」と、教室の外にまで聞こえるような声で叫んだ。それに対し、「はーいっ!」とこちらも負けじとばかりの声量で先生に返すクラスメイト達。
(……名字が被った、いやったぁぁぁぁ! うれしい! うれしすぎる!)
好きな人と何か一つだけでも共通しているものがあると、嬉しい気持ちになるだろう? 今まさにそんな状況に僕はいる。
まだはっきり好きとは決まっていないが、少しずつ僕は彼女に惹かれている。こんな気分、今まで味わったことがない。もしや一目惚れ?
はぁ……もし彼女が隣に座るようなことがあれば、僕は完全に惚れてしまうなぁ……まぁ、今日に限ってそれはないか。
「で、空井の席だが……あそこだ」
そう言って担任が指差す。
(いったいどこに座るんだ奏多ちゃん!)
息を荒げながら指先がさす場所に振り向く。
(あっ……)
今日は色々あった。チャック全開で登校したり、京子の太ももに触れなかったり、突然赤髪の少女に襲われたり、『非科学的な力の存在』に気付けたり……。
嫌なことだらけだったけど、今、現在、生きてきた中で一番と思えるくらいの嬉しい出来事が起きた。
ガムの当たりが出るよりも、テストで百点とることよりも、遥かにうれしい。
なんと、転校生は─────僕の隣に座ったのだ。
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