帰り道のこと。僕は食いしん坊を見つけた

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「ねぇ、陽炎って知ってる?」  放課後。僕の左隣りに座る超絶美少女、空井奏多が身支度をしながら突然、そんなことを訊いてきた。  ゆっくりと地に引かれ、腰あたりまで伸びた、柔らかな質感を持つ茶色の髪。装飾品の可愛らしいリボン。  黒ダイヤを髣髴させるほど大きく透き通る双眸は、見惚れてしまうほど美しい。  身長は平均より小さめ。というかかなり小さく、僕と比べても頭一個分程の差だ。  僕はあまり背が高くないのにこの差だ。他の子と比べたら……いや、考えるのはよそう。この子がもし背のことを気にしていたら悪いし……。 「ねぇ、聞いてる?」  痺れを切らしたのか、少女が席を立ち上がり、僕の傍に近づく。肌と肌が接する距離だった。 「えっ、あぁ……うん。聞いてるよ。えっと陽炎だっけ?」 「そう、陽炎」 「えっと、たしか……気象現象だっけ? あんまり詳しくは知らないけど……ていうか空井さん」  なんでこんなこと訊くの? と続けて言おうとした時、「奏多でいいよっ」と、柔らかく微笑み、彼女が言った。  そんな彼女に対し、「じゃあ僕も翼で」と、同じような条件を提示した。    
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