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『…桜木…』
『…はっ、はいっ…』
突然名前を呼ばれて
声が上ずってしまった
ああっもう…
完全に動揺してるのが
ばれちゃったじゃないっ…
『…すまない…』
…あ…
一人で意識してる場合じゃない
先生の様子はとても普通に見えない程ぐったりしていた
『今、薬用意しますね…っ』
山南先生に言われた通り
二番目の引き出しを探す
…これ…かな…
“風邪”と書いてある仕切りに入った薬を取り出して、水を持って先生に差し出して
『…先生…薬です…
…大丈夫ですか?』
先生は
私の言葉に小さく頷くと
一気に薬を水で流し込んだ
そして
ふぅ…と息を吐いて
髪を掻き上げる
そんな先生の少し疲れた顔が
妙に色気があって
目を奪われてしまう
ダメ…
ドキドキする…っ…
こんな状況なのに…っ…
『先生…?
少しベットで休まれたらいかがですか?』
私の動揺が先生にばれないように
とりあえずベットで休むように進めると
『ああ…そうさせてもらう…』
とゆっくり立ち上がった
覚束ない足取りでベットに向かう先生
大丈夫…かな…
そっと手を伸ばすと
先生が少しだけ笑った
『…そのような顔をするな…
大丈夫だ…』
やだっ…私…
どんな顔してたの…?
それより…
先生の
その少し笑った顔に
赤くなる顔
隠せないよ…っ
こんな二人きりの室内で
もう…私…どうしたらいいか…っ
『…美樹…』
『はいっ!!』
えっ……
聞き間違いじゃない
先生 今、
はっきり美樹…って…
思わず顔を上げると
美樹と呼ぶ先生の手のひらが
私の頬を包んだ
少しだけ息の上がった先生の吐息が
額を掠める
間近で見る先生の顔に
胸が張り裂けそうにドキドキして
耐えられなくなった私は
目をギュッ…と瞑ってしまった
次の瞬間
ふっ…と笑う声と
額に感じる唇の温もり
そして
フワッ…
先生の腕の中
私の髪に唇を充てて
優しく髪を撫でてくれる手が
堪らなく幸せで
『…少しだけ…このままで…』
耳元で囁く力ない声に
私は無言で抱き締め返す
なんで…
なんでこんなに愛しいんだろう…
《衝動━》
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