春の園

2/2
前へ
/10ページ
次へ
風が柔らかな熱を帯び 真冬の冷気を緩めたら 耐え忍んだ大地より 力を蓄えた命が芽吹く 色付く緑の園に在り 陽と朝の露を鏤めて 遥かな空へと微笑みながら 瑞々しくも開く 双葉の腕(カイナ) 新たな命を受け入れて 粛々と目覚めし春の園よ 葉脈の刻む遺伝子を継ぎ 野は幾億もの年月を巡る 雛鳥が生を主張し囀る 大樹に寄り添う強き花 華麗に咲く日を夢に見て 若葉色に光る意思は歌う 緑の原に響け 恵風Hymne 過ぎし時の罪も赦して 始まりを告げる 命のHymne 蒼く芽吹いた子等の園で―― 春の園を満たす蜜の香に 小さな命の運び手が集う 羽音を追う野兎の見た 新緑に映える麗しの花 【Hymne―イムヌ】仏語で『賛歌』。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加