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《コンコン》
薄いベニアで作られたドアを誰かがノックしている。
ジューダスのTシャツとパンツ一丁という姿の俺だけど、慌てる事は無い。
どうせ俺の部屋を尋ねて来るのは男しか居ないからな。
爆撃されたような寝癖の付いた頭のまんま、俺はドアを開けた。
「うぃっす!」
片手を上げ、俺の部屋へ踏み込んで来たのはツレの隆敏だった。
グダグダな俺の姿とは違い、隆敏はちゃんとキメ込んだ服装でグラサンまで掛けていた。
グラサンがサマになる隆敏は、無茶苦茶良い男なのに、不思議な事にコイツも彼女は居ない。
「朝っぱらからキメちゃって。
どっか出かけんの?」
ロック雑誌やマンガ本が散らばる床へ座り、俺はタバコに火を点ける。
「パチンコ打ち行かん?
どーせお前暇だろ?」
隆敏もタバコに火を点け床へと腰を下ろした。
「パチンコ行くってか?
そりゃ構わんけど、その為にグラサンかける必要あんの?」
俺がニヤリと尋ねれば、隆敏もニヤリと笑う。
「パチンコ屋に行く途中、女が声かけてくれるかも知れんだろ?。
キャーッて感じでよ」
「是非そうなって貰いてーもんだ」
クソ真面目なツラで隆敏は言い放つが、今まで一度として隆敏も俺も《キャーッ!》と言う、黄色い歓声を浴びた事は無い。
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