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家から少し離れた場所へ行けば、小さな畑で鍬をふるう青年がいた。
幼かった俺は、そんな青年を見て思わず表情を明るくする。
?『兄ちゃん!』
大好きな兄に向かって駆け出す。
?『どうしたー?』
幼い俺が駆け寄れば、歳の離れた兄は作業中でも手をとめて微笑みかけてくれた。
?『そろそろ帰ろうよー!』
?『あー…もうそんな時間か。』
空を見上げた兄はようやく夕刻だと気付いたらしい。
?『また気付かなかったの?』
いつものことだが、呆れたため息が出る。
?『わるいわるい。…じゃあ、帰るか。』
?『うん!』
俺の頭をくしゃりと撫でて先を行く兄を追いかけるのが大好きだった。
走って追いかければ、転ぶぞー?と笑いながら振り向いてくれて。
だけど、
?『―――殿とお見受けいたします。』
あの日、そんな幸せな日常は壊された。
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