追いかける男

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               もうここにいても仕方がない。 そう直感した私は店を出ようとした。             その時、誰かと目が合った。  先程、私を追いかけていた男だった。店内の順番待ちのごく短い列の後方に並び、無表情で私を見ていた。            瞬間、私は今この状況は夢だと思い、自ら自分の頬をつねった。 わずかに痛い。                       そう実感したとき、私の頭に2つのことが浮かぶ。       誰も助けてくれないから逃げ切るしかないことと、この男はただの通り魔ではなく私だけを狙って追いかけてること。                      私はもうどうにでもなれと思いながら、店を出てひたすら走った。後ろで人の気配がする。おそらくあの男だろう。なぜか振り返らなくても分かった。                      しばらく―数秒だか数分だか分からなかった―走ると、私の肩に手が置かれた。私は振り返りも抵抗もしなかった。ただ冷静に、男が追いついて私を刺すんだろう、 そして私の人生は終わりだと考えた。             次の瞬間、脇腹に、どん、という衝撃があった。痛みはなかった。とうとう終わりだと思うと同時になぜかほっとしていた。
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