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──幼い日の夢を見た。
「──ここに俺たちの秘密基地をつくる…!!」
大木の下で一人の少年が言い放つ。
「…は!?」
そこにいた誰もが目を丸くする。
「んなことできる訳ねぇーだろうッ!」
「あんた…ついに頭がおかしくなっちゃったわけ?」
「そ、そうだよっ!俺ら、子供だけでなんて…」
「出来もしないことを無闇に口走るんて…アホですわね」
「右に同じく…出来るわけない」
みんな口々に同じことを唱えた。僕もこの時はそう思っていた。──だけど、言い出した彼は違っていた。
「出来ないなんて誰が決めたんだよ?やってみなきゃわからないだろう?」
「だけどよ~。いくら、この女が馬鹿力でも大人がいなきゃ駄目だろう?」
「誰が…『ば・か・ぢ・か・ら』…ですってッ!?」
ドスッ!!
「──がはぁっ!!?」
「馬鹿力は言いすぎだよ!一応、これでも…一応、女の子なんだからさ!」
ガシッ!!
「一応…って、なに?そして、なぜに2回言ったのかしら?」
ミシィ…ッ!ミシィ…ッ!
「──や、やめ…頭が割れちゃっ!!」
「お前らが言いたいことはわかる。だけど、誰もが出来ることをやったって何も面白くないだろう?」
ポンっと大木に手を置いて、彼は僕らに振り返ると…。
「──それに、夢は口に出さなきゃ叶わないんだぜ?」
それが、僕らのリーダー…彼の口癖だった。そして、彼の言葉には不思議なものがあり“出来ない事なんて無い”と思わせてしまう。
「…ったく、夢がコロコロ変わるリーダー様だな」
「ホントだよね。この前は、イカダをつくって湖を横断だったし」
「ちゃんと、最後まで作って横断しただろう?」
「…途中で沈みましたけどね」
「あの時は、丸太を浮き輪代わりに向こう岸まで行ったのよね…本当、最悪だったわ」
「…最悪?明は…最悪?」
「し、失敗は成功の母だっ!ツベコベ言わないで作業に取り掛かれ!」
──彼の言葉に、しぶしぶ散らばっていく仲間たち。
「ほら、お前もボサッとしてないで行くぞ」
彼の差し出された手を握り締め、みんなの──仲間の元へと僕も走り出した。
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