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雑誌の写真撮影のため外にでた俺と章くん
梅雨の時期だからこそ良い絵が撮れるんだよ
かなり力を入れながらカメラマンがそう言っていたのを思い出す。
ザアザア
雨の強さは先ほどから変わらない
右目に一つの色が映った。
公園のフェンス脇にひっそりと控えめに咲いている花たち。
「あそことかよくない?」
無意識に呟いた言葉
そこには赤紫の紫陽花が雨に打たれながら咲いていた
梅雨の時期だからこそ美しさを増す紫陽花
紫陽花の葉にはカタツムリが一匹
のろのろと歩いている
「いいね。俺も賛成!」
隣にいた章くんも賛成してくれたところでカメラマンに提案
「うん、いいと思うよ。紫陽花がより二人を引き立ててくれそうだし」
じゃあ両脇に立ってみて?
次は屈んだの撮るから
パシャ
パシャ
雨の音にシャッターを切る音が短く混じる
少し
目を閉じてみよう。
雨とシャッターの音のバランスが心地よいリズムを作り上げて
傍らにはずっとずっと
思い続けている
想い…続けている
愛おしい人
叶わないのならば諦めるのではなく
少しでも多く側にいて
少しでも多く何でもいいから共有したい
深呼吸をして
目をあけて
にっこり笑って
この空気と同化できるように
呼吸をリズムに合わせて
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