21人が本棚に入れています
本棚に追加
「はい!お疲れ様!良い絵が撮れたよ。ありがとう」
最後のポーズは二人の後ろ姿
お互い左手と右手でピースを作って傘を差して
紫陽花は真ん中に
雨は小降りになっていた
公園の管理者には既に撮影許可と掲載許可をもらっていたため直ぐに楽屋へと帰ることになった
「……ちょっと残念だなあ。」
車に向かって歩き出した瞬間章くんが小さく呟いた
紫陽花を振り返って寂しそうに
「何が?」
きくと章くんは立ち止まって口を開く
視線はそのまま紫陽花に向けてある
「紫陽花。自分用に一枚撮りたかった」
「……へえ。そういう趣味あったっけ?」
「いや。直感的に」
……確かに綺麗だし雰囲気あるし
撮りたいとは思うよね
「今から撮ったら?携帯あるよね?」
「……うん。じゃあ、紫陽花の横に立って?」
「は?」
……立つって俺が?なんで?
「早く」
「あ、うん」
時間はあまりない
急いで紫陽花の横に立つ
「はい、チーズ」
カシャッ
一枚
俺と紫陽花が写った写真だけを撮って満足そうな笑みを浮かべる章くん
「ありがと」
「え?いや……うん。」
「じゃあ帰るか」
「うん」
少し先を歩く章くんの後ろを歩く俺
近いようで遠い距離
写真
紫陽花だけのを撮らなくてよかったの?
ききたいけど口から出てくれない言葉
……いつか
俺も章くんと紫陽花の写真を撮ってみたい
章くんを紫陽花の隣りに立たせて一枚だけ
宝物に一枚だけ。
END
Next→反省
最初のコメントを投稿しよう!