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逸らした背中から布団へ倒れ込み天井を見上げ、懐かしい家の内装に笑みを浮かべる。
出て行った時のまま綺麗に片づけられた自分の部屋。
欠かさず掃除をしていてくれたのだとあたたかいものが込み上げて、さらに大きく伸びをした。
やっぱり家は落ち着く。
疲れからかうつらうつらと落ちてくる瞼に逆らいながら、携帯を開きサイト内を行き来する。
…4年と6カ月の月日は短いようで長い。
そして…
長いようで、短い。
向けになって蛍光灯の光を瞳の奥に入れて、目を閉じる。
沸々と湧き上がる消えない感情を胸の内に抑え込み、逆らえなくなった睡魔に身をゆだねることにした。
長い髪が風に揺れる。
それを押さえる細い指先。
『…………くん、』
形の良い唇が俺の名前を呼んで…。
目が、覚めた。
脈打つ鼓動が嫌に速くて思わず胸を押さえる。
汗で張り付いた髪を掻き上げて今、見た夢は何だったのかと考えてみる。
でも靄が掛かって思い出せないそれに、いつまでも付き合ってられないと見切りをつけて、勢いよく起き上がる。
「よっ」
壁に掛けた時計と携帯の時間を確認して、空腹を主張しだした腹に従って部屋をでた。
「かあさん飯まだ?」
豪勢な夕食と格闘し風呂上がりの自室。
もう依存じゃないかと苦笑しながら携帯を開く。
---- (*'ー'*)ノ~~ 才 力 工 └|♪☆・゚:*:゚ ----
---- コウガさん、おかえりなさ~い♪ ----
---- お、やっと戻ってきたな、今度飲みに行こうぜ ----
何人かの友人がくれるコメントをチェックして、会ったことがない人もいる不思議な繋がりの“友人”たちの言葉をあたたかく思いながらベランダでビールの缶を開ける。
少しづつ変化を告げる春から夏の風を感じ黒く澄んだ高い空に輝く星を眺めていた。
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