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口を閉ざして、目蓋を落とすと、人各々だろうが自分には、音が聴こえる 。
靴の、床に叩き付けられる音 。
黒鉛の磨り減らされる音 。
衣服の擦り合う音 。
そして何よりの、溢れんばかりの人の声 。
甲高い声も、声変わり前の歪な声も、悲鳴にも断末魔にも似た声も、 自分には只の騒音にしか聴こえない 。
溜め息を吐きたくなる頃を見計らい、静に目蓋を押し上げる 。
頬杖をついた手の平に、じんわりとした、微かな痺れを覚えたが、この体勢を崩そうとは思わない 。
窓際に位置するこの席からは、眩しい青と、人の群れがよく見えた 。
―――早く夜になんねえかな
欠伸を1つ、声が出そうに成るのを抑えながら肺を押し潰すと、ぼんやりとまた外を眺めた 。
どうやら次の授業が始まるらしい、また低い声の持ち主が、教室の扉を開いた 。
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