,俺

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再び耳孔を震わせた、彼の教師のお経を余所に、空を見ながらもの想いに耽った 。 のも束の間、未だ時計の針は授業終了時刻の30分以上も前の数字を指して居るのにも関わらず、早々に居眠りをしている奴が居る 。 隣接した机に堂々と突っ伏す姿は、馬鹿にしか見えなかった 。 態となのかすら見当のつかない寝癖と、だらしなく出たYシャツの裾、時々聴こえた小さな声が隣の馬鹿の寝言であることも自分は知っていた 。 あの教師は未だ、馬鹿が居眠りをしている事に気が付いて居ない様子で、相変わらず御経を唱えている 。 馬鹿を起こそうとは、微々たる程も思っては居なかったが、研かれた様に光を反射させる女爪の、その手に 。 いつの間にやら手を伸ばしていた 。
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