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――…
―――…
「そういえばさ、」
夜。
あたしたちは手を繋いで
丘の上のベンチで
星を眺めていた。
あたしがふと口を開くと
「ん?」
と、吉岡くんは
あたしに向き直る。
「もしかして、夏休みバイトの
とき、吉岡くんがTシャツ
脱がなかった理由って…」
「ああ…、そう
腹の傷を隠すため」
そう言って、制服のシャツを
バッとめくりあげた。
――…そこには。
右の脇腹に、上から下へと
走る大きな傷が
くっきりと刻まれていた。
「…痛そうだね」
あたしが、少し罪悪感を
感じて、シュンとしながら
言うと、
吉岡くんはフッと笑って
「でも、これがあったから
愛姫を毎日思い出せた。
1日たりとも、
忘れたことはなかった」
と、言った。
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