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ある女子高生が自殺した暗い廃ビル――
「おい、いつになったら事を起こすんだよ…」
「え~まだ準備できてないよ~」
僅かに割れた窓から木漏れ日が差しているがそれが尚の事この廃ビルの奇妙さを際だたせている。
そしてそんな奇妙な場所で密会する男が二人。
そしてこのビルが奇妙と言われるゆえんの『地縛霊』の私が一人――
二人の男の片方は、柄の悪い顔に制服を着ていることから、恐らく不良であろう。
そして――もう一人の男は、黒髪で男にしては長いセミロングである。
見た目だけなら精悍な顔つきで爽やかな好青年とみえるだろう。
しかしながら――意外にもこの変人黒髪の爽やか男こそが、『地縛霊』である私にとって目の前の柄の悪い不良なんかよりもよっぽど酷い障害だ。
そんな黒髪爽やか男はここが廃ビルになる前の、『偉そうな』という言葉を体現している社長のデスクに座りながら話す。
何故彼がそんな席に座りながら話しているのか――
それは彼がこんな奇妙な廃ビルを拠点としている変わった人物だからである。
「てめぇ…!!そう言っていつもごまかしやがって!!俺は単身であの人を裏切ってんだぞ!!」
不良は、爽やか男の適当な態度が鼻についたのか、怒りに声を荒げる。
――っていうか怖い!!あんま叫ばないでよ!!
――そんな態度してたら憑いてやるわよ!!
――できないけど…
「アハハハ――所詮不良の集まりでしょ?何をそんなに必死がってるんだか…」
そんな不良の態度を何事もなかったかのように黒髪爽やか男は余裕の表情を崩さない。
寧ろ不良を蔑んでいるかのような表情だ。
「てめぇ…」
そんな、爽やかな男に不良は剣呑な目つきになり声を曇らせる。
――ぎゃあーー!!
ちょっと…顔怖いから…
それに何でアンタも火に油注ぐようなことすんのよ!!
「アハハハ――怒った怒った!!」
黒髪爽やか男は不良をおちょくるように挑発し、笑い声を上げる。
「舐めやがって…やっぱてめぇ…殺す…」
そんな黒髪爽やか男に不良は遂に怒りの沸点が最大に達したのか、その懐から銀色にギラつく刃物を取り出した。
――あーもー…私知らないからね…勝手にしてよ…
――ハァ…こんな生活嫌だ…
大体全てはこの黒髪爽やかイケメン男が悪いんだ…
――私の『エンジョイ地縛霊ライフ』を邪魔する…この悪人が!!――
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