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春の麗らかな陽気に包まれて、俺はようやく終わった卒業パーティーから家路に着いた。
「なんだか早かったね~。次はもう高校生かぁ……実感湧かないや」
隣に並んで歩いているのは従兄弟の大牙。その整った横顔を流し見しつつ、俺は黙ったまま歩を進める。
「ちょっとちょっと嶽!さっきから何で黙ってるのさー」
「……あぁ?何でもねーよ」
新城大牙。歳の差なんと3日違いの腐れ縁とも言うべき血の繋がりで結ばれた、親友にして諸悪の根源。
無自覚に女子をたらしこむその腕はまさに超高校級。奴にしてみれば、女の子は基本優しく清楚で自分に都合の良い存在だ。
が、しかし。その反動なのか女子達は大牙以外の男には驚くほど手厳しい。そして顔の最低ラインも非常に高い。
……マジ勘弁してくれって…。俺別に顔が良い訳じゃないんだから……。
「ふぅん、ならいいや。
そういえば、二人で帰るの久し振りだよね~」
「そうだな~、いつもはクソビッチ共がいるからな」
「び、ビッチって……そ、それよりあれ、何かな?」
大牙が指を指した場所には、光輝く何かが。
「何だってそりゃ……………、
魔方陣?」
半信半疑で答える俺の脳裏には、《勇者召喚の儀☆》という、如何にも頭の悪そうな奴が好みそうな単語が過る。
……あぁなるほどこいつは異世界に行くんだな。
序でにこの位置関係だと俺は確実に巻き込まれる…と。
「うん、大牙よく聞け。お前はこれから異世界に召喚されて魔王倒せって言われると思うから頑張って一人でやれよ」
早口にそれだけ捲し立ててから俺は蝶の如き軽やかなバックステップによって大牙と距離を取った。
俺の唐突な行動に着いていけず、大牙はオロオロと慌てふためく事しか出来ずにいた。
そして、
「え!?何それっ!?…てか、何か近づいて来てるぅぅぅu」
大牙は為す術もなく光に飲み込まれた。
最後の足掻きなのか、俺の鞄に付いていたキーホルダーに手を伸ばしながら。
そうして、俺らは魔方陣に呑み込まれたのでした(小並感)
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