花屋の住人

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 再び女性に視線を戻すが、やはり無反応である。  声をかけるべきか迷ったが、水を撒く作業を繰り返す女性を今更になって不気味に思い、それを実行に移すのは躊躇われた。  別に扉を閉めに行くだけだ。  結局女性に声はかけずに、自身に言い聞かせるように心中で呟いて階段を上がる。  扉を前にして、呪文のように閉めるだけと繰り返しながら、そっと手を触れた。  何だ?  扉の先から感じた酷く懐かしい気配に、考えるよりも先に身体が動いていた。  扉を閉じようとしていたはずの手は逆に開くために動き、建物の中へと足を踏み入れていた。  立派な不法侵入に外で見た女性の姿が頭を過(よぎ)ったが、足は止まらない。  暗い廊下を進むと、開け放たれた扉から光が漏れている部屋を見付けた。  そう言えば、この建物こんなに広かったか?  外観を見た時、随分と奥行きがないことに驚きはしなかっただろうか。  それなのに、いざ入ってみれば外観からは想像出来ないほど広い空間が広がっていた。  懐かしい気配につられてここまで来たが、ふと女性に感じた不気味さを思い出し、今度こそ足を止める。
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