花屋の住人

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 画板より少し小さい紙には、一つの建物が描かれている。 「これ?これは、ナチのお家だよ」 「家?」  描かれていたのは、家と呼ぶにはあまりに大きく豪奢な建物。  目の前の少女が描いたとは思えないほど美しいそれは、城と呼んでも何の遜色もない。  そう言えば、ノーラの城ってあんな感じじゃなかったか。  それに、見覚えのあると感じた外で見た女性のメイド服は、確かリズノーラの城で働いていたメイド達が着ていなかっただろうか。 「うん。丁度この窓から見えるの」 「へぇ……見える?」  窓の外に目を向けて笑顔を浮かべるナチの視線を追いかけてみれば、信じられない光景が広がっていた。 「嘘だろ……?」  窓から見えたのはナチが描いた絵にそっくりな建物で、一年前までユノセスと一緒に世話になっていた場所だ。  本来の生活からかけ離れたその場所での日常が、昨日のことのように頭の中を駆け巡る。 「アプティバ城」
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