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「ティア、どうしたの?早く行こうよ。パパ様とママ様が待ってるよ」
「そりゃ分かってんだけど……これ、どうにかなんねぇの」
魔法使いと呼ぶナチに眉をしかめてティアでいいと言えば、早速呼び捨てである。
叔父さんとか呼ばれるよりはましか。
うんざりと周りを見渡せば、ナチに付いて一緒に離宮まで来たと思われる護衛の男三人が、眼光鋭く睨み付けてくる。
そりゃ王女がいかにも怪しい男を連れて戻ってくれば警戒するよな。
それも、王族である三人しか入ることの出来ない離宮からだ。
俺の言葉に三人を振り仰いだナチは、その険しい顔に首を傾げた。
「どうして皆怖い顔してるの?」
「姫様、その隣の男は……」
三人の中で一番長身で眼鏡をかけた男が、俺に対する警戒心はそのままに、幾分表情を和らげてナチに問いかけた。
「ティア?ティアはね、消えた魔法使いだよ」
「魔法使い、ですか?」
「うん、炎の魔法使い」
ご丁寧にも魔法使いと紹介された俺は、そんなものになった覚えはないと、成り行きを見守りながら嘆息した。
ふいに強い視線を感じ顔を上げれば、一人の男と目が合い、互いに暫し見詰め合う。
男は若く、まだ少年と呼んでもいい年だろう。
「うわっ、ほんとに陛下そっくり。若い頃の陛下そのまんま!まあ、俺若い頃の陛下なんて知らないけどな!」
「黙れチビ」
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