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王宮内を奥へと進み、リースに連れられてきた場所には見覚えがあった。
王家の象徴である獅子と、獅子に祈りを捧げる乙女が対になるように描かれ、それを中心に精巧な細工が施された巨大な扉。
荘厳な雰囲気を放つ扉に圧倒されながら視線を隣に向ければ、俺の腰の辺りまでしかないナチの金髪が風に揺れていた。
あの時、隣にいたのはユノセスで、右も左も分からないこの世界で互いの存在だけが頼りだった。
なのに今回お前はそっち側にいるんだよな。
「ウォルティア・スノイル殿下及びナチ王女、両名をお連れ致しました」
ゆっくりと目の前の扉が開かれる。
「取り敢えず、一発殴るか」
呟いた言葉は、扉の開く音に掻き消されて空へと消えていった。
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