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花屋に近付くに連れて、思ったほど小さな建物ではないと分かったが、思わず自分の目を疑いたくなった。
目を擦ってみても目の前の光景は変わらず、徐々にスピードを落とした足は、ついに花屋の前で止まってしまう。
両隣に建物があるわけでもないのに、何を間違ったか、この花屋は横ではなく縦に伸びていた。
無駄に広い敷地の割に、この建物を一周するのに五秒とかからないのではないだろうか。
立ち止まって不躾に見上げているにも関わらず、女性が花に水を撒くのを止める気配はない。
こちらの存在に気付いていないと言うより、まるでそこに誰も存在していないかのような反応だ。
女性の態度に眉を潜めるが、キィと何かが軋む音に首を巡らせた。
建物の横には二階へと続く階段が螺旋状に備え付けられており、その先に一つの扉が存在していた。
どうやら音の発生源はその扉のようで、わずかに開いた隙間にまるで誘われているような錯覚を覚える。
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