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「だあれ?」
引き返そうと身体を反転させるが、聴こえた高い声に既に手遅れと知った。
部屋の前まで来てしまっていたのだから、懐かしい気配のする存在に気付かれて当たり前だ。
「だあれ?」
「ユノセス」
観念して声のした方向に視線を転じれば、今朝思い出したばかりの人物が椅子に腰掛け、窓から射し込む光を浴びて輝いていた。
記憶の中の姿と重なりつい名前を呼んでしまったが、よく見ると不思議そうにこちらを窺う人物と、今朝思い出した人物は全くの別人である。
顔立ちは似ていると言うよりそっくりそのままなのだが、何より髪と瞳の色が違う。
腰まで伸びた緩くウェーブした金髪に紫紺の瞳。そして決定的に違うのが性別だ。
自分の片割れは男だが、目の前の人物はどう見ても少女だろう。
「パパ様を知ってるの?」
ぱっと表情を明るくする少女の言葉の中に、聞き捨てならない単語が一つ。
「……パパ?」
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