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聞き間違いじゃなければ、確かに少女はパパと言ったはずだ。
この場合、パパを指す人物は一人だろう。
え?この子供、セスの子か?
「お兄ちゃん、パパ様の知り合いじゃないの?どうしてパパ様の名前を知ってるの?」
「パパ様って……ユノセスのことだよな」
「うん。ナチのパパ様の名前はユノセスだよ。お兄ちゃんはだあれ?」
「俺は、ウォルティア」
少女の名前はナチと言うらしく、片割れであるユノセスの子供だと言う。
ありえない状況に同姓同名の別人かと疑うが、ナチの顔立ちはユノセスそのものであると同時に、幼い頃の俺でもあるのだ。
疑う余地がないのが逆に疑わしいのだが、ナチがユノセスの子供であるのなら懐かしいと感じるのも納得がいく。
だが、ナチが本当にユノセスの子供だと言うのなら、やはりこの状況はありえないのだ。
ユノセスに会うことも、その子供に会うことも、どんなに望んでも叶わない願いで、だからこそ俺は決して消えることのない虚無に支配されているのだから。
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