燃えてるね。

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燃えてるね。

「真っ赤だね」 「うん、真っ赤だね」 それはごーごー音を立てて「熱いね」 「うん、熱いね」 それは見たことのないくらいの勢いで、 「今日は星が綺麗だね」 「うん、瞬いてるね」 それは悔しいくらい輝いていて、 「どうしようか」 「うん、どうしよう」 篠原あやめ、17歳、本日をもって家がなくなりました。 決して裕福じゃなかったけれど、普通に生きてきた。学校を経営している伯父さんの支援でなんとかやってこれたし、お兄ちゃんと生活しはじめてからも苦痛だと思ったことはなかった。普通に学校に行って、普通に帰って、普通に家事して、普通に寝る。 あたしは特に可愛くないけど、ブスかって言ったらそうでもないと思う。 頭はよろしくないけど、体育と数学は5で。 彼氏がいた時期もあったし(長くは続かなかったけど)それなりに友達もいた。 そう、何もおかしいことはなかった。 でも目の前で起きている現実は普通じゃなかった。 火事の原因はお隣に住む人の煙草の火の不始末だったらしい。 3年前からお兄ちゃんと二人で住んでいたアパートは全焼。 服も、教科書も、すっごい使い心地の良かった枕も、全部なくなってしまった。あたしの手には通帳(残高…うん)とブー(大事な人形)と野菜のアスパラガスだけ。 寝てたし、パジャマ。 慌ててたし、左右違うスリッパ。
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