★...余興

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「久しぶりですね、佐藤月華君。」 あの男…ッ! 俺をこの学校に誘い、そして人生設計をめちゃくちゃにしてくれたであろう男がそこにいた。 本来なら理事長が座ってあるであろう席に男が座り、こちらに微笑みかけた。 怒りの沸点が低くない俺でも超えるのにはその笑顔だけで十分だった。 俺はその怒りに身を任せ、その男の胸ぐらをつかみ叫んだ。 「てめぇの…、てめぇのせいでどんだけ苦しんだかわかってんのか!」 「おやぁ…?苦しんだのはわかります。でも、ほんとに苦しんだ“だけ”ですか?」 何言ってるんだこいつ… まだ余裕ぶってる男の顔をめがけて俺が拳を振りかぶったその時 「おっと、いけないよ佐藤くーんー」 俺の腕が止まった。 声の主は五十嵐先生だ。 「ほっといてくれ先生!あんたには関係ない…!俺とこいつとの問題だ!」 「んー、たしかにね…。俺もあんたら二人の因縁にどうこう言う筋合いはないよー、うん。でもさ、一応俺も先生なんでね、生徒が暴力を振るうのを易々と見てるわけにもいかないでしょ」 先生の先生らしい言葉を初めて聞いた気がする。 しかしそれどころじゃ…ない…、体が…動か…な… 少年の瞼は眠るように閉じ、倒れ込んだ。 五十嵐先生は地面と接触する瞬間、体の下に手滑り込ませ少年の事を抱きかかえ、ゆっくりと近くのソファーに寝かせた。
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