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少年の瞼は眠るように閉じ、倒れ込んだ。
五十嵐先生は地面と接触する瞬間、体の下に手滑り込ませ少年の事を抱きかかえ、ゆっくりと近くのソファーに寝かせた。
「ちょっと、五十嵐先生。校内で生徒に魔法をかけるのは禁止ですよ」
至って冷静なその男の口調だが、怒りの色もかすかに見える。
「いやぁ、すいやせん理事長。でも、流石に理事長殴って退学となるとクラス全体の雰囲気も悪くなっちゃうし俺のモチベーションもさがっちゃいますよー。まぁ、一応俺も担任ですしねー」
理事長と呼ばれた彼は、少し気難しそうに言った。
「しかし、私も悪いことをしました。彼はなんの事情も知らないでこっちへ来てしまったんですから」
「しかたねーっすよ。てか、佐藤…こいつの事起こしたほうがいいっすかね?渡すもん渡して帰しましょう」
「そうですね。私がいると彼、また興奮しそうなので少し外に出てますね」
理事長はそう言うと、扉の向こう側に消えていった。
五十嵐先生は少年の額に手を当てた。
「ぬ、ん…」
不抜けた声と共に目を覚した。
ん?俺は寝ていたのか?
ここはどこだ?
放課後、五十嵐先生に呼び出されて…
そして理事長室…
――久しぶりですね、月華君。
「あいつ…ッ!」
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