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「お前の言うあいつはいねーよ」
「いでッ」
俺の額に五十嵐先生の右手の側面が落ちてきた。
「大層な回想してるけど、寝てたの数分だぞー?」
五十嵐先生のチョップは思った以上にいたかったが、俺はあいつをこのまま許すわけにはいかなかった。
「あいつだけは許さん」
この部屋にあいつがいないとわかるとすぐに立ち上がり、部屋のドアノブを回していた。
「おい、佐藤。今大事なのはなんだ?復讐か?違うだろ、衝動的になるな。今を大事にしろ。」
と、いい俺の右腕をがっしり掴んだ。
先生の言う言葉はいつもと違って覇気があり、少し気押されてしまった。
でも、確かにあいつは許せないが今は違う。どう学校で生活していくかが問題だ。
あいつを殴っていたら退学になっていたかもしれない。遼、月島さんや空。せっかく会ったのに別れるのはつらい。
先生の腕をほどき、いさぎよく元いたソファーの前まで戻り深く腰掛けた。
先生も、対面のソファーに座り今の俺にとって衝撃の一言を発した。
「ちなみにお前の言う"あいつ"は理事長だぞ」
「え゙!?」
俺は驚きのあまり声を上げた。
と、言うか自然と声がでた。
「理事長の襟付近掴んだ時はどうなるかと思ったが、お前良かったな…。あの理事長じゃなかったらとっくに退学だぞ。」
やべぇ…。ほんとに学校に来れなくなるところだったのかよ。
一時の感情に身を任せるのは危険だと肝に命じられたな…
「あ、そういえば先生!渡したいものあるって言ってましたよね?」
「あぁ、そうそ。これこれー」
そう言ってしわくちゃの白衣のポケットから取り出したのは一枚の紙だった。
そして、その一枚の紙はシールみたいになっていて、ペラリとはがした。
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