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暗闇の奥から誰かが来る。
"その人"との距離は20メートル
スタスタと歩いてくるその人は、足元の僅かに積もった雪などには目も暮れずひたすらまっすぐこちらへ向かってきた。
"その人"との距離は10メートル
通った道の雪は踏みつけられその場所だけ凹んでいるのに俺は気づいた。何故か切なかった。
"その人"との距離は5メートル
街頭の下へ来た時、全貌が明らかとなった。
髪の毛はうっすら赤みがかかっていて、顔立ちは眉目秀麗というワードが一番しっくりくる。
どちらかといえば細身で、性別は顔を見た時に男だとわかった。
"その人"との距離1メートル
俺は彼と初対面のはずだが、何故か初めて会った気がしない。
普通だったら、警戒態勢に入り。なるべく隙を作らないようにする。
が、何故か安心してしまう。
さらに、この人が手紙の送り主だというのもなんとなく気がついていた。
彼は目が合うとにっこり笑ってこう続けた。
「こんばんは、佐藤月華さん。今日は来てくれてありがとうございます。」
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