白い服を赤く染めて

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確かに一年前に殺したはずなのに……バラバラにしたのに生きているはずがない。 「ば、化けて出やがった……俺に殺されたから、俺を殺そうってのかよ!」 美子のその姿に、慌てて背を向けて走り出そうとした雄蔵だったが……振り返った瞬間、その場から動く事が出来なくなってしまったのだ。 自分に何が起こったのか……足を前に出そうとしても力が入らない。 その理由に雄蔵が気付いた時にはもう遅かった。 さっきまで後ろにいたはずの美子が、どういうわけか自分の前にいたのだから。 そして、ぬいぐるみを持っていない方の手が、雄蔵の胸に刺さっていたのだ。 肉体的には何の外傷もない。 だが、確実にその手は、雄蔵の心臓を握っている事を、当の本人は実感していた。 「あ……た、頼む……殺さないで……」 「ねぇ……赤いのちょうだい」 美子が手を引き抜くと、雄蔵はその場に崩れ落ちた。 外傷もなく死んだ雄蔵は心臓発作とされたが、これを美子がやったという事を、この先も知られる事はない。 「美子ちゃん、あの新しい学校に行こうよ。お姉ちゃんがずっとずっと一緒に遊んであげるからね」 その様子を見ていたのは、謎の病死を遂げた美紀。 赤い服を着た少女は、赤く染まった服を着た少女の手を取り、土手を歩き出した。 少女達の呪いは、これから半世紀に渡り、学生達を苦しめる事になる。
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