携帯

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脇に立てかけたモニタの隅 点滅するはずの場所 何度も見てさ ちょっと女々し過ぎ? 自然ともれたため息 「新着メッセージ 0(ゼロ)」 オペレータの指示はうわの空 地平線から放たれた光線で いきなり世界が回る回る うるさいな 相手してる暇はないんだって 1機、2機、もうひとつおまけに1機 黒煙をあげる敵機は 大気圏に吸い込まれていく 目の前で 真っ赤に溶けゆく機体 命が燃える 神聖なこの瞬間に 軽く舌打ち 視線の先はモニタ画面 「新着メッセージ 0」 何も言わずに消えた君 なぜ? と問うことすら拒否をする 人の命を焼いて生きるのが 俺の正体 嫌悪なら慣れてるさ 正直に教えてくれればいいのに あんなに悲しそうな瞳で笑ってさ そのくせ置いていくなんて オペレータの緊急通信 運悪く 奴の標的らしい 最新装備のバケモノがくる 俺は今 死ぬわけにはいかない 君に答えを聞くまでは 現れた敵機は 嫉妬するほどに美しいフォルム 滑らかな多関節に 背筋は凍りつく 汗ばむ手で にぎり直した操縦桿 敵を睨む目の端に 文字がチカチカ点滅する 「新着メッセージ 1」 『さようなら』 けたたましい警告音が ロックオンを告げる 顔をあげればそこには 美しいバケモノが 重火器を構えていて 『さようなら 愛しい人』 無色の銃光が音もなく 俺の体を貫いた .
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