テイク1

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渡辺は、自転車を必死に漕ぎながら、尿意を我慢し続け、やっとの事見つけたコンビニに滑り込んだ。自転車は渡辺によって乱暴にぶん投げられ、店前に横倒しされたままだ。 センサーが鳴らす音を合図に「いらっしゃいませ~こんばんは」と店員が1人、また1人と計4人が時間差式に声を張り上げた。それがこの店の接客マナーなのか、単に元気が良い連中なのかは定かじゃないが、それを聞いた渡辺は舌打ちをした。 アイスケース、ATM、雑誌コーナーを一目散に横切り、化粧室の扉に渡辺は手をかけたが、開かない。先客がいた。 今にも「堤防が決壊寸前」の渡辺は更に頭に血がのぼり、扉を思い切り蹴っ飛ばした。 中から学生服を着た男が不機嫌そうに出てきて渡辺を睨み付け、 「なんだてめえ」 と声を張り上げた瞬間に渡辺は、学生服の男の襟を掴み、体を反対に入れ替え、顔面を思いっきり殴りつけた。 化粧室の扉正面の壁に思いっきり叩きつけられ、ずり落ちながら座りこんだ学生服男に唾を吐いた渡辺は、化粧室に入り鍵をかけた。 慌ててチャックを降ろし、小便をする渡辺。 ギリギリで間に合った小便に安堵しながら壁を眺めた渡辺の目に、 「お客様…いつも綺麗に使用していただき、誠にありがとうございます」 という文字と、頭をペコリと下げながら微笑んでいる店員のイラストが書かれた告知が張られていた。 「はっきり綺麗に使えとかけよ馬鹿!」 と頭にきた渡辺は残り小便を便器から外し、そこら中にかけまくった。 「まぁ綺麗に使えと書かれてもこうするけどね俺は…あれだよ…正解はなんも貼らない事だな。」 と「いろんな意味」での満足感を得て化粧室を出た。
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