紫苑

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「まあ、いいじゃん。……それよりさ、さっき真幌と話してたよね?」 不安そうな表情(かお)。 聞きたいけど、聞きたくない。 そんな表情だ。 「また、泣かせちまった。……俺は真幌を泣かせてばかりだな」 自嘲する俺に、総司は切ない笑みを向ける。 「それは土方さんだけの問題じゃないでしょ。そうやって、いつも一人で抱え込もうとするんだから」 ったく、こいつは……。 俺はただ、曖昧に笑うことしかできなかった。 「真幌は気づいてたよ、俺たちが殺ったって」 一度視線を逸らしてそう言うと、総司は驚いた顔をしてそっか、と目を伏せる。 ……薄々感づいてたのかもな。 俺は真幌の言葉を総司に話した。 泣きそうな顔で、だけど必死に伝えてくれた言葉を。
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