紫苑

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「真幌は、僕らが思ってるよりずっとずっと強いのかもしれないね」 総司がぽつりと呟く。 「この計画を聞いたときさ……」 そして、ふっと視線を遠くに彷徨わせた。 こいつ……いつの間にこんな顔するように? こいつももう、俺が思ってるほど餓鬼じゃねぇのかもな。 「考えたんだよね、僕。もしこれが真幌に知れたら、どうなるんだろうって。 真幌は僕らを軽蔑して、ここを出て島原に行ってしまう。きっとそうなるだろうなって、思ってた……」 「総司……」 「けど、杞憂だったみたいだね。よかった。本当に、よかっ…………あれ?」 何、泣いてんだよ……。 何、泣かせてんだよ……。 この乱世、若い連中には酷だ。 真幌なんて、頼れる人すらいない。 総司だって、江戸に残って試衛館を継いだ方が幸せだったんじゃないのか? 俺や近藤さんのために、こんな運命に……。 だけど。
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