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「神父様ぁーっ。おはよーございます!」
「神父様、おはようございます」
「あっ、神父様!おはようございますっ!今日もお髪が素敵ですね」
「はい、皆さんおはようございます」
ご近所の皆さんと挨拶を交わし、植え込みに水をやるのが毎朝の私の日課です。皆さん今日も元気ですね。
ベルク君(8歳)率いる子供達が大きく手を振ってくれるのに応えながら、私は今日も平和を実感して幸せに浸ります。
「ああ、幸せだなあ。主よ、本日も平和であることに感謝いたします。どうかどうかこのまま毎日が平穏に美しく平和であらんことを」
手で主を讃える印を作り、私は天に祈りました。なんでも、隣の隣の隣の隣の隣のフラシス帝国の辺りでは悪しき魔王と、英雄たちそして勇者様が戦っているそうですが、聖都は今日も平和です。
「恐ろしい事ですね。世界を滅ぼさんと魔物を使う魔王……」
そして、その魔王と対等に戦い、打ち勝てる勇者様、英雄達。その肩書がなければ、【能力】を持つ彼らは果たして人間なのか……
「……おや?私は何を?」
何か考え事をしていたような気がしますが。ああ、朝食をまだ取っていませんでした。お腹が空きすぎてぼうっとしてしまったのですね。
「礼拝も終わっていますし、主に感謝しながら頂きましょうか」
私は如雨露を片づけて教会へ戻る事にしました。
「……」
道の隅の浮浪者に目をくれることも無く。
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