序章 ~始まり~

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「…貴方がこの教会の神父になって,どのくらい経ったのだね」   「もう、三年ほどになります」   不意に力の抜けた声で問いかけられ、私は反射的に答えました。   「その前の教会には何年居たかな」   「五年です」   「その前は?今までいくつの教会に何年ずつ居たか思い出せるかね?」   私は老人が何を知りたいのか、よくわかりませんでした。仕方ないので聞かれたことに答えます。   「五年ずつ、転々としております。この教会で、もう……」   何箇所目なのか、思い出せないことに気が付きました。一番最初の教会はいったいどこだったのでしょう?   「いつから神父をしているんだね、え?」   「いつから……?」   私はいつ神父になったのでしょうか。記憶にある限り主に祈りを捧げてきました、が、それより以前のことは朧のようです。私は知らず頭を振りました。   「歳は幾つなのか、自分で解るか?」   歳。私は何歳なのでしょう。覚えている限り私は長い事神父でした。何年も何年も。それはどれほどの長さだったのでしょうか。   「儂にはそなたは二十歳過ぎに見えるがね。人間はそれほど長く生きるものだったか?思い出して御覧」   「私、私は、わたしは人です」   聖教の経典には、人間以外は人に在らずとあるのです。私が人でなければ何故私は神父をしているのでしょうか。  
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