詩狼

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カチャンと鍵をテーブルに落とす。 憂鬱な時間は終わった。 一人の部屋で胸を撫で下ろす。 初めの頃。 私は他人よりも少しだけ神経を使い、他人より少しだけナイーブなだけなのだと。 自分に言い聞かせる様にやり過ごしてきたのに。 でもそれは大きな間違いであると気付いたのだ。そして私の生活は一変する事となる。 でも誰にも言えない。それは私だけの秘密なのだから。 いや違う。 「私達の」である。 ふらふらとした足取りで思い切りシャワーのノズルを開けた。 開けた? 何時? あの夏の日に私が開けたもの。 あの時から。きっと私は私ではなくなったのだ。 シャワーを浴びながら乞う様に願う。 誰よりも。私は私を丁寧に洗い、優しい哀しみと共に眠ります。と。 そして朝までの束の間私は私を施錠する。 それでも無事で居られる保証はないのだ。
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