再会

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紗英は髪も染めておらず、伸ばしてもいない。服装もシンプルなワンピースで、アクセサリーもつけていなかった。当然、と言うべきか紗英のように地味な女子などほとんどいない。皆、派手な服を着て、やり過ぎなくらい化粧をし、大きなピアスが光っている。紗英はそんな皆を嫌悪したりはしない。ただ、自分には出来ない、というだけで。 紗英は友人と合流すると、目立たないように隅のテーブルに座り、大人しく料理を食べていた。派手な団体が見えたクラスのテーブルには、とても行く気にはなれない。チラチラと周りを見回して、「ああアレが○○くんだ」とか「あの人変わったな」とか思って、特に騒ぐこともなく静かに過ごして帰る予定だ。 「…秋穂?なんかため息多くない?」 「…え?」 そんな中、隣の迫田秋穂から聞こえたため息がすでに数回目なのを不審に思い、紗英は声をかけた。 「ごめん、なんでもない」 「そ?」 秋穂の視線がチラッと動いた気がしたが、紗英はそれ以上何も聞かなかった。 「あ、デザートだ」 誰かの声がして、紗英たちのテーブルにデザートが乗る。 (やっと帰れる…) 楽しんでいる同級生には申し訳ないと思ったが、これが紗英の本音だった。 「紗英、どうやって帰る?」 「迎えが来る」 「じゃあ、下で待っとこ」 「うん」 同窓会は無事に終わり、会場では二次会の打ち合わせが行われている。紗英と秋穂たちはその喧騒から逃れて会場を出た。 会場は二階だった。階段を降り、外は寒いので目立たないような場所で迎えを待つ。まだ二階からは騒がしい声が聞こえていた。 「あ、迫田さん」 そのとき、男の声がした。 秋穂が小さな声で「げ」と言ったのが聞こえ、紗英は振り返る。 「帰るの?」 「うん」 そこにいたのはまるでホストのように髪をセットした誰かだった。正直にいってじっくり見ても正体はわからない。彼が去る気配がないので、秋穂は近づいて行った。紗英にはその足取りの重さがはっきりとわかった。 「ねぇ、あれって田上健治でしょ?」 「秋穂、小学校の同窓会で会ったって言ってたよね」 ああ、と紗英は思った。 雰囲気は変わっているが、面影はある。秋穂と仲良かったかな?と首を傾げていると、話は終わったようだ。帰ってきた秋穂が疲れきった表情をしていたので、誰も詳しくは聞かなかった。
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