時の迷子

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 栄枯盛衰。  文化文明は栄え、そしていつかは停滞し、衰え朽ちる。  それは森羅万象、三千世界の理(ことわり)。  形あるものは、いつかは壊れ――命あるものはいつか死を迎える、それは当然の帰結。  皮肉屋な神様、運命と言う詐欺師を囀ずんだところで、不毛な事でしかないのだろう。  そしてまた、人類は朽ちるのだ――何度も、何度も飽きることなく繰り返してしまう。  そこはかつて都心と呼称されていた残骸地。  路上には無数の乗用車や輸送車。  アスファルトは幾重に捲れ舗装面が斜めに飛び出し、そこからは豊潤な大地が地肌を晒す。  周囲は巨大な樹に絡み付かれて貫かれたビルが乱立し、アスファルトから旺盛に伸びる蔦に絡み付かれ、自然と融け合う。  街の名残が仄かに香る、過去に霊長類が築き上げた文明の死骸地。
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