4439人が本棚に入れています
本棚に追加
「春野」
「うん?」
「あれ、出して」
「アレ?」
「ずっと持ってろって言ったろ。まさか忘れたとかねーだろうな」
政臣がトントンと指で鎖骨のあたりを叩いて見せた。
「……あっ!ある!ちゃんと持ってる!」
その仕草でネックレスのことを言ってるのだと理解する。急いで首から外すと手の平に乗せて見せた。政臣はそれを受け取るとチェーンから指輪だけを抜き取った。
「ん。手、出して」
「え、あ、は、はいっ」
どちらの手を出すべきか分からなくて思わず両手を出すと、政臣は左手にそっと手を添えた。
久しぶりに触れた手の感触にドキリとする。薬指にゆっくりとはめられた指輪はピッタリだった。
「ちゃんと約束、守ってたんだな。入らなかったらどうしようってちょっと心配してたんだけど」
「なんで太ってる前提なワケ!」
「わりぃわりぃ」
ムカッとして政臣を見上げると、ふいに顔が近づいた。そして唇がそっと触れる。
何の前触れもなく突然キスなんてされたら、もちろん心臓は爆発しそうなくらいドキドキして、また泣いちゃうくらい嬉しくなるから、目を閉じて、政臣がそばにいる喜びを噛み締めた。
最初のコメントを投稿しよう!