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「……ま、俺はてめぇのことを可愛いとは思ってないけどな」
「やっぱ死ね!」
ちょっとだけ、本当に本当にちょっとだけ、
キュン、としてしまった自分が超憎い!
政臣はヘッと鼻で笑うとまた前を向いて歩き出した。
「あ~……春野ってさー、食べ物でいちばん何が好き?」
「はあ?なんだよ突然……」
「いいから早く教えろブス」
「なっ!?ハンバーグだよ!煮込みハンバーグ!」
「……煮込みかよ。手間が増えたな」
「あ?なにをひとりでブツブツ……」
「じゃ、今日は煮込みハンバーグな。俺様の特性ハンバーグを食べられるなんて、心底ありがたく思えよ?童貞ブス」
「ああ!?何様だお前は!政臣だって童貞のクセに粋がってんな!童貞ワカメ!」
「てめ、童貞童貞うっせーんだよ!」
「先に言い出したのは政臣の方だろっ!」
「調子乗りやがって……このやろう、煮込みじゃなくて和風ハンバーグにしてやろうか?ああ?」
「嫌がらせが地味すぎるわ!」
気づいたら僕は、政臣の隣でプンスカ怒りながらもいつもの調子を取り戻していた。
そんな僕を見おろして、政臣はフッと笑みをこぼす。
もしかして政臣……僕が元気出せるようにワザとケンカふっかけてきた、のかな……。
「煮込みとなれば、今日は買うもんいっぱいだな。明日の朝の分も買わないといけないし……春野は食べるだけなんだから荷物持ちしろよ」
「政臣……」
「あ?拒否権はナシだかんな?」
「……ありがとう」
ちょっと気恥ずかしいけど、本当にそう思ってる。
目が合うと政臣はパッと視線を反らす。
「別に……てか、そういうこと言われると調子狂うんだよ……」
「え?もしかして照れてんの?キモイんですけど」
「うっせー!ブス!」
実は政臣は、
僕が思ってたほど、
悪いヤツじゃないのかもしれない。
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