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「そうか…。」
そう呟くと城之内は少しホッとしたような顔をして呼び止めて悪かったなと仕事を再開した。
『なんで皆そんなに転校生の事が気になってるんだろう……。勇翔が言ってた小説通り会長は転校生に惚れたのか…?』
そう思いつつ武は生徒会室から出ると同じ階にある風紀室に向かった。廊下は静かで外で部活をしている生徒の掛け声しか聞こえない。ここの階は一般生徒立ち入り禁止だから生徒が居ないのは当たり前。何故立ち入り禁止なのかと言うと、ここの学園は基本的に学校行事や企画、部費の配分、修理費用などの金銭面まで、生徒会や風紀に任せっきりだ。だから生徒会と風紀の仕事を妨げない様に一般生徒は立ち入り禁止なのだ。まぁ他にも、生徒会員や風紀委員のファンが侵入して好きな人の持ち物を取ったり、重要書類を盗んだり、襲われないようにする為もあるのだが…。
武は風紀室に着くと、ドアをノックした。すると中から声が返ってきた。
「誰だ。」
「書記、米澤…です。」
「入れ。」
失礼します…と入ると風紀委員はあんまり居なかった。きっと校内の見回りをしているのだろう。制裁とか強姦とか普通にあるからね、ここの学園は。
「書類…持って、きました…。」
「ご苦労。」
1番奥にいる委員長の所まで行くと書類を渡した。委員長は顔をあげると切れ長の目と合った。委員長の名前は氷室徹。委員長は会長と並ぶ程美形で、銀縁眼鏡をかけ、サラサラの黒い髪で、生徒からは冷酷で見た目は綺麗だけど近付くととんでもない目に合うから"氷の薔薇"って呼んでいる(勇翔情報)。でも委員長は冷酷でもないし近寄ると痛い目になんか会わない。真面目で厳しくて優しい人だ。
「そういえば、久城と藤谷兄弟が仕事をしていないそうだな?」
「はい……、すみません…。」
「いや、米澤が謝る必要はない。転校生にかまけているアイツらが悪いんだ。全く…、食堂の物は壊すわ、人の話聞かないわ、大声で騒ぐわ…、アイツの何処に惚れたのか…。」
氷室はハァと深く溜め息を吐いた。
「この前なんか食堂で暴れて皿を5枚、イス1個壊しやがって…。」
「えっ…!」
「?知らなかったのか?この前食堂で会長と喧嘩になって暴れたんだぞ?」
「…知らなかった。」
ここ最近、部屋に夕飯を運んで貰って仕事をしていたため、そんな事が起きてるとは知らなかった。
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