序章 もっと高く

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 俺はバックを手に取り、すがるこいつを振り払う。  するといつもの決め台詞「康也のバカ……」が俺の足を強引に止める。  この一言を察するに、俺に拒否権は無くなる。  こいつは地べたに座り込んでいじけているように見えるが、それはこいつがなにか「奢れ」と言っているサインなのだ。まあ、この前のようなイレギュラーな態度より、いつも通りのこいつのほうが、まだましか。 「早くしないと、店閉まるぞ」  と、まあ、すっかり機嫌が治ったやつは、既に行く店は決まっていたらしい。  俺を引っ張りこじんまりとしたカフェに入ったのは、午後5時を過ぎた頃だった。
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