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扉を開けたら心地よい鈴の音が出迎えたそのカフェは、高校生がよく行くファミレスや定食屋とはまったく別次元の空間が広がっていた。木目のデザインが施された壁に、茶色く店内を照らすぶら下がった照明。まだ高校生には早そうな珈琲豆の苦い匂いが鼻に違和感を覚えさつつ、数えるほどしかない席によそよそしく座った。
席についた俺はこの空間が落ち着かないのか、マイペースに流れる慣れないクラシックを聴きながら、もう一度店内を見渡した。
俺たち以外の客は見当たらない。
カウンターにも、店員がいる気配はなかった。ただカウンターには火にかけっぱなしのポットがコトコトと音をたて、その横に見える大きな古時計がコツコツと時間を刻む。壁には役割を忘れた小さな窓が二つか三つ。その窓に映る俺はとても、不思議だった。
冴えない単調とした表情に、真っ黒でさばさばした髪。この店のせいか、渋く見えてしまう。
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