小さな大人と大きな子供

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自分が小さかった時の記憶を、皆さんはどれくらい覚えているだろうか。家族と行った旅行が楽しかったとか、誕生日に貰ったプレゼントが嬉しかったとか。振り返れば、私の記憶にはそのような思い出が無い。私が忘れっぽい性格だという事とは、全く関係ない。いや、ちょっとはあるかもしれないが、そういうことにしておきたい著者の気持ちも分かって頂きたい。 私がまだ幼稚園の頃、猫山家は集合団地に住んでいた。階段を降りれば公園があったし、子供が伸び伸びと遊ぶ敷地もあった。私は同じ幼稚園のユカリちゃんと毎日遊んだ。同じ敷地内に住み、母親同士が仲が良かったこともあり、幼稚園から帰ったらお互いの家にお邪魔する事もあった。ユカリちゃんには四つほど歳の離れたアキお姉さんがいて、私のことも可愛がってくれた。私にはそのアキさんが随分と大人に見え、憧れさえ感じていた。 ユカリちゃんと私の家は勿論同じ広さだったが、彼女の家には大きなピアノが置いてあり、少し窮屈だった。ユカリちゃんとアキさんはピアノを習っていて、コンクールに出ては賞を貰うほどの実力だった。
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