5人が本棚に入れています
本棚に追加
母の哀しそうな顔が目に焼き付き、私の心臓を焦がす。
「えー、だってー!私は、ピアノやったことないもーん」
へらへらと笑ってみせると、冷たい表情のまま、母が口を開く。
「あんたもユカリちゃんみたいだったら、良かったのに」
その言葉は、心の深くを抉るナイフに感じられた。その後も、母の家事を手伝わない時や、家の片付けをしない時、母は常套句のように「ユカリちゃんはいつもお母さんのお手伝いをしてるのに!」 、「ユカリちゃんは、整理整頓をきちんとやってるというのに!」と冷たい目で怒るのだ。
その時、既に妹がいたこともあり「アキちゃんは面倒見がいいお姉さんでしょ!あんたもお姉さんなら、もっとお姉さんらしくなりなさい!」と、アキさんの名前を引き合いに出すのだった。
どうしてお母さんは、いつも私とユカリちゃんを比べるのだろう。お母さんは私より、ユカリちゃんやアキさんの方が好きなんだ。私はそう思っては、泣きそうになるのを堪えた。
最初のコメントを投稿しよう!