第八章

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未来は期待を込めて廊下へと視線を移すと、そこには見知らぬイケメンと見知った平凡そうな男子がいた。   会いたかった顔に未来の表情も一気に明るくなり、自分に群がる生徒達を押し退けて彼の元へ駆け寄り……。   「いっくん!!」   「ち、ちょっ!?」   「いっくんいっくん!!会いたかったよいっくん!!」   感激のあまり彼……一郎に真正面から抱き付いた。   真っ赤になって慌てふためく彼をよそに、未来は力を弱めることなくむしろグイグイと体を押し付けて来る。   間違いなく一三中学No.1の大きさを誇るであろう豊満な胸を形が崩れるほど押し当て、頬と頬を擦り付けるように甘えてくるのだから一郎からしたらドギマギどころではない。   彼女と少しでもお近付きになりたかった男子達はまさかの光景に衝撃を受け、柚の時と同様にボロボロと崩れ落ちた。   「と、とりあえず落ち着いてよ!!友達を紹介出来ないから!!」   「……ふへ?お友達?」   「想像以上の密着具合だな。彼女と紹介された方が納得出来るくらいだ」   一郎の言葉を聞いてようやく落ち着いた未来は、隣でドアにもたれ掛かっていた剣の存在をようやく認識した。   ……いや……最初に視界に入ってはいたのだが、一郎と再び出会えた喜びで瞬時に存在を忘れてしまったと説明した方が正しいか。   「いっくんのお友達さん?」   「あぁ、佐藤剣だ……ってか……いっくん?」   「あ、うん!こっちの方が可愛いかなって思って!」   「あ、あの……そろそろ離してもらえると助かるんだけど……」   「あ、ごめんごめん」   ここでようやく体を離した未来は、初対面の剣に改めて自己紹介。   持ち前の明るさと人懐っこさですぐに剣と打ち解けた未来だが、何故か一郎の裾を掴んだまま離さない。   剣はニヤニヤと何やら楽しそうな笑みを浮かべ、突然の抱擁にまだ心拍数が落ち着かない一郎へ顔を向けて……。   「『いっくん』ねぇ……」   「その顔止めて下さい」
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